試験目的
DLT-CC、T-CCでは、木材と木材上部のコンクリートとの層間のせん断力の伝達機構のシアコネクタが重要な構成要素です。DLT-CC、T-CCに適するシアコネクタのせん断性能を確認するため、複数種類のシアコネクタでせん断試験を実施して、以下の項目について確認しました。
シアコネクタによるせん断性能の確認
コンクリートの境界層の仕様の違いによるせん断性能の差の確認
試験方法
1) 試験体の仕様
各試験体を図1、図2に示します。使用した側材、コネクタの種類、仕様を表1、表2に、試験体の種類と記号を表3に示します。各試験体はコンクリートとの付着による影響軽減、防水を目的に表4に示す境界層を設けました。
側材(木材)の仕様
1)スギDLT
DLTラミナには群馬県産スギJAS枠組壁工法構造用製材 甲種2級を使用しました。
縦振動法によるヤング係数が5.5〜11kN/mm2、含水率16%以下で欠点を含まない材を木ダボ接合しました。
DLTは縦振動法によるラミナ5枚のヤング係数の平均値が同等となるよう割付けし、⻑さ450mmに切り出しました。2)スギ集成材
スギ集成材は同一等級構成集成材強度等級 E75-F270を使用しました。⻑さ3,000mmで測定した縦振動法によるヤング係数の平均値は、7.32kN/mm2でした。
主材(コンクリート)の仕様
使用コンクリート:呼び強度24、スランプ18cm、粗骨材の最大寸法20mm。実験前後の材料特性を表5に示します。
試験体は、屋根のある屋外にてコンクリート打設し、ビニールシートを掛け養生しました。
試験概要
加力方法
試験内容接合部の圧縮型せん断試験
試験実施日2023年8月29日〜2023年9月7日
試験場所(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
実大強度試験機:A-300-B4 前川試験機(株) 最大容量 3000kN
加力方法および、スリップ変位の測定方法を図3に示します。試験体を下側加力盤に設置し、上部クロスヘッド側の反力盤の回転を固定した後に下側加力盤を上昇させることで接合部に1面せん断力を作用させました。
加力は一方向単調載荷とし、最大荷重後その80%に荷重低下するまで加力しました。側材の開き止めにクランプ金物を使用しました。
試験結果
DLT試験体の力学的特性値の平均値を表6に、集成材試験体の力学的特性値の平均値を表7に示します。P-δ曲線についてDLT試験体のまとめを図4に、集成材試験体のまとめを図5に示します。
P−δ曲線
荷重は試験機の荷重値をせん断面2面で除した1面あたりの値を示し、スリップ変位は相対変位4箇所の平均値を示しています。
短期接合耐力の算定
「財団法人 日本住宅・木材技術センター木造軸組工法住宅の許容応力度設計」における「第2章木造軸組工法住宅の各部要素の試験方法と評価方法 5. 仕口、継手の評価の方法」に準じて短期基準接合耐力を求めました。
試験結果の考察
a)シアコネクタせん断性能ついて
- ・各接合タイプともDLT、集成材とで耐力に顕著な差がないことから、本試験結果はDLT、集成材(CLTを含む)に限らず、含水率やヤング係数等の諸条件が同等であれば、その他製材や丸太加工材でも活用可能と考えられます。
- ・LS(ラグスクリュー)は先穴加工が必要なることから、施工性も考慮するとSC(スクリュービス)は使い勝手がよいと考えられます。
- ・山形鋼を用いたPL(プレートタイプ)は、DLTまたはCLTなどの床版面に複数配列も可能と考えられます。
- ・NN(ノッチ)とNL(ノッチ+ラグスクリュー)は、非常にせん断性能が得られました。NN、NLはDLTや集成材に限らず、大径材や丸太材を活用したT-CCでの活用も期待できます。
b)コンクリートとの境界面の仕様について
- ・接合具の耐力について、境界面の仕様の違いによる顕著な優劣はありませんでした。施工の容易性、接合具の施工確認、ノッチへの対応、コンクリートの染み出し確認から、コンクリート界面の仕様はシートタイプで使用上問題ないと考えます。