令和5年度 木材製品の消費拡大対策のうち
CLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業

DLT-CCの活用について

事業名:木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動
事業主体:株式会社⻑谷萬

本事業で実施したDLTとコンクリート合成材(DLT-Concrete Composite、以下DLT-CC)のシアコネクタのせん断性能、実大梁の曲げ性能などの構造性能の検証より、単体のDLTに比べ、コンクリートとの合成により高い曲げ性能を得られることが確認されました。木質材料とコンクリートの合成部材の活用は、木材活用と炭素蓄積の観点から、鉄骨造やRC造のコンクリートスラブ床構造へのDLT-CCへの代替による木材利用の拡大が期待されます。

  • 図17 木-コンクリート合成部材のイメージ図①
  • 図17 木-コンクリート合成部材のイメージ図②

図17 木-コンクリート合成部材のイメージ図

図18 木-コンクリート合成床版活用のイメージ図
図18 木-コンクリート合成床版活用のイメージ図

本事業で検証したシアコネクタのせん断性能は、DLTだけでなく、製材や丸太材、丸太材の両側の面や3面を挽き落とした太鼓形の材や、CLTでも同様に活用が可能です。シアコネクタの改良を重ねることで、例えは天井面を木材現わしとし、製材歩留まりに配慮した床構造での、大径材の利用拡大にも寄与できると考えられます。

図19 丸太材を活用したDLTとコンクリート合成部材のイメージ図
図19 丸太材を活用したDLTとコンクリート合成部材のイメージ図

木とコンクリートとの合成により、平面的な混構造が可能となる。さらに副次的な効果として、床構造で必要な遮音性能や、上面からの耐火性能の向上も期待できます。

DLTは大規模な生産設備を必要とせず、地域の木材関連事業者が取り組みやすく、またコンクリートプラントは全国各地にあり、どこでもJIS品質のコンクリートの入手、施工が可能であることから、DLT-CCは各地の中小事業者でも取組める手法と言えます。
DLT-CCは地域産材の活用だけでなく、地域の建設事業者の木材活用の取り組み促進にも寄与できるものと考えます。

DLTは⻑辺方向(強軸方向)の一方向曲げを対象としています。今回のDLT-CCは短辺方向(弱軸方向)の合成効果について確認していないため、活用は⻑辺方向(強軸方向)の一方向曲げを対象とし、かつ負曲げを受けない架構に限定されます。

内装制限が課せられる室内の天井では現わしでは、使用できないので注意が必要です。(延べ面積100㎡以内に防火区画した場合、防火区画による制限緩和を受けた場合、難燃処、準不燃処理を施したひき板を積層する場合、スプリンクラーと排煙設備が設けられている場合などは、この限りではありません。)

DLT-CCの利用拡大に向けて

本事業の実施試験の結果を踏まえ、今後、公共建築物や都市部における木造建築物、非木造建築物でDLT-CCの利用拡大を図るうえで、解決が必要な課題を3つ挙げます。

1) シアコネクタの改良、せん断性能の確認

木-コンクリート合成材の層間のせん断変形、曲げ剛性に、シアコネクタの仕様、せん断性能が影響します。シアコネクタの種類・形状、木部やコンクリートへの埋設深さ、ノッチの深さや形状など、せん断性能に影響する因子を複数組み合わせ、より改良したシアコネクタのせん断試験を通じてシアコネクタの最適化が求められます。

2) ⻑尺材活用にむけた構造性能の確認

本事業では⻑さ4mの一般流通材を使用したため、ノッチ型のシアコネクタを複数設けることができませんでした。ノッチ型シアコネクタを複数設置したロングスパン材での実大曲げ試験、クリープ試験を行い、木とコンクリート合成効果の確認が求められます。

3) 木-コンクリート合成材の解析手法の確立と評定取得

設計者に広く、木-コンクリート合成材を活用してもらうためには、解析手法の確立が求められるとともに、デッキプレートとコンクリートとの合成スラブのように一般化を図るため、計算モデルの確立を図り、第三者機関による構造評定等を取得することで、木-コンクリート合成材(DLT-CC、T-CC)の一般化が可能となり、さらなる木材活用が期待できると考えられます。

謝辞

本事業は令和5年度 木材製品の消費拡大対策のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等 木質建築部材技術開発・普及事業の採択を受けて実施致しました。本事業の推進にあたりご協力頂きました関係者の方々に、心より感謝の意を表します。

参考資料

  • 株式会社⻑谷萬:木構造振興株式会社 令和4年度 木材製品の消費拡大対策のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2023年2月)

  • 株式会社⻑谷萬:木構造振興株式会社 令和2年度 木材製品の消費拡大対策のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2022年2月)

  • 株式会社⻑谷萬:木構造振興株式会社 令和元年度 木材製品の消費拡大対策事業のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2021年2月)

  • 株式会社⻑谷萬:林野庁 令和元年度木材産業・木造建築活性化対策事業(横架材・2×4部材等の製品・技術開発事業)「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2020年3月)

  • 大木文明:木材とRCを機械的接合した合成床について(木材工業、巻77号、P2-7、2022-01)

  • 大木文明、ほか4名:複合床スラブの曲げ性能に与える合成度の影響に関する実験的研究(日本建築学会大会学術講演梗概集、66B、P215-222、2020-03)

  • 畔柳 歩、ほか6名:集成材梁-RC床版合成梁設計法の提案と実験による検証 集成材梁とRC床版の一体効果を考慮した合理的部材設計手法の構築 その1(日本建築学会構造系論文集、697号、P393-400、2014-03)

  • 蒲池 健、ほか6名:集成材梁-RC床版合成梁設計法の提案と実験による検証集成材梁とRC床版の一体効果を考慮した合理的部材設計手法の構築 その2(日本建築学会構造系論文集、702号、P1147-1156、2014-08)

  • Worked examples: vCeCCotti、A.(2002).“Composite concrete-timber structures.”Progress in Structural Engineering and Materials、4(3)、264‒275.

  • Samuel Cuerrier-Auclair, M.Sc., P.Eng.l、March 2020、“Design-guide-for-timber-concrete-composite-floors-in-Canada”