試験目的
DLTの利用範囲拡大のため、実大居室での吸音DLTによる吸音効果を確認しました。
試験方法
1) 実大居室での吸音DLTの吸音性能測定
2,730mm(W)×2,730mm(L)、室内高さ2.2mの居室(図 21、写真 38、写真 39、写真 39)を2室用意しました。1室の壁A面を合板仕様とDLT吸音パネルA(写真41)、もう1室もA面をDLT吸音パネルB(写真42)とし、他の壁面、天井は下地、合板現しとしました。
試験場所株式会社長谷萬 館林事業所 事務所棟 2F
試験実施日令和4年9月30日
試験計測株式会社リオン
測定方法
居室内にスピーカとマイクを設置し(図24)、スピーカの出力を固定して各マイクで同じ音圧レベルを計測するようマイク位置を調整します(写真43)。スピーカよりピンクノイズ※を発生させ、各マイクの測定点において、A特性と125~4,000Hzのオクターブバンドの測定を行いました。
※ピンクノイズとは雑音の一種で、音のエネルギーが周波数に反比例するノイズ(「ザー」というような音)で、様々な音響測定に使用されます。同じ周波数成分を持つ光がピンク色に見えることからピンクノイズと呼ばれます。
2) 吸音DLTパネルの吸音性能測定
試験場所株式会社ベル開発 試験室 (岐阜県可児市)
試験実施日令和4年12月6日
試験計測JIS A 1409(残響室法吸音率)に準じた吸音性能測定
実大居室で使用した吸音パネルA、吸音パネルBの吸音性能を測定しました。残響音測定は残響室法吸音率測定に従って行いました。具体的には Eyring-Knudsen の 残響公式より、試料無しの場合とありの場合の残響時間の違いから試料の吸音率を求めます。
残響時間の測定はインパルス積分法によります。5本のマイクロホンによる同時測定を行い、その平均値を算出します。測定結果はPCで計算処理し吸音率を求めました。
試験結果
実大居室における各仕様でのピンクノイズ、暗騒音の測定結果は表 11の通りです。
・DLT吸音パネル仕様は合板仕様に対し、低音域を除く全域で約3~6dB程度の音圧レベル減少が確認されました(図26)。
・3dBの減少とは、音量が約3/4に低下することを示します。また 6dBの減少とは、音量が約1/2に低下することを示します。
・暗騒音※の測定結果(図 27)より、各仕様とも2,000Hz周辺でピークが確認されました。これは館林事業所工場内のプレカット加工機の音を拾ったものと考えられます。
※ここで、暗騒音とは、特定の発生源からの騒音を計測する際に、発生源以外から発生している全ての騒音を指します。・吸音の効果は居室の気積に対する面積により効果が変わりますので、吸音DLTの設置面積を増やすことにより、さらに吸音効果が高まる可能性があります。
2) 吸音DLTパネルの吸音性能測定
実大居室で使用した各吸音パネルの、残響室での吸音率測定結果は表12、図28の通り。
・低周波数帯では吸音パネルAの吸音性が良好な値を示しています。吸音パネルAの吸音材の容積が大きいためで、吸音性は吸音材の容積に影響する傾向が示されました。
・吸音パネルBは高音域で高い吸音性能を示しています。これはパネル表面の加工形状と吸音材との組合せによるものと推測されます。