令和4年度 木材製品の消費拡大対策のうち
CLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業

DLT壁の加熱試験①
(無載荷加熱による予備試験)

事業名:木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動
事業主体:株式会社 長谷萬

鋼製枠を使用して試験体4体を同時に加熱する加熱試験を実施しました。

試験目的

以下の項目についてDLTの防火性能を確認します。

  • DLTパネルと、柱とDLTパネル接合部の燃込みの有無(遮炎性能、遮熱性の検証)

  • 積層材の燃焼性状の確認(遮熱性能の検証、炭化速度の検証)

試験方法

1) 試験体の仕様

試験体は1,200mm(W)×1,200mm(L)のDLT壁とし、各試験体の仕様を下表(表3)に示します。試験体A、B、Cは室内側加熱を想定した3つのDLT仕様としました。試験体Dは外壁側加熱として金属サイディング(ガルバリウム鋼板 t0.35mm)を施したDLTパネル1体の合計4体としました(図1、図2、図3、図4)。

表3 壁炉 4つ枠試験体の仕様
表3 壁炉 4つ枠試験体の仕様

2) 試験体の形状、寸法

  • 図1 試験体A 姿図
    図1 試験体A 姿図
  • 図2 試験体B 姿図
    図2 試験体B 姿図
  • 図3 試験体C 姿図
    図3 試験体C 姿図
  • 図4 試験体D 姿図
    図4 試験体D 姿図

試験方法

1) 加熱方法

試験は(公財)日本住宅・木材技術センター壁炉にて、炉内の熱電対により測定した温度(加熱温度)が(公財)日本住宅・木材技術センター制定「防耐火性能試験・評価試業務方法書」に規定する次式による標準加熱曲線に沿うよう制御しながら試験体の片面を45分加熱し、加熱終了後は速やかに脱炉、注水消火しました。

2) 測定項目

① 加熱温度
② 内部温度、裏面温度

試験結果

試験場所公益財団法人日本住宅・木材技術センター

試験実施日令和4年9月21日

加熱試験終了後、脱炉し注水消火しました。加熱終了後、脱炉・注水消火まで約10分経過しました。
試験結果を表4に示します。

表4 試験結果
表4 試験結果
※試験体Bは合板がなく炉内貫通の状態であるため、温度は参考値とし遮炎性の判定及び裏面温度規定値の適用除外とします。
写真1 試験体位置
写真1 試験体位置

試験動画

壁炉での無載荷加熱試験

試験結果の考察

1) DLT壁の防火性について

予備試験結果より、裏面合板なしで5mmの隙間を設けた試験体Bでは、加熱開始から約25分経過時に火炎貫通し、耐火接着剤で火炎部を埋め45分間加熱を継続しました。
試験体A、Cでは、裏面の合板貼りの通気止めを有するため、顕著な燃え込みは生じず、DLT壁でも裏面の合板貼りを有する場合では、ラミナ積層面で火炎貫通し難いことが確認されました。
外壁側加熱の試験体Dは、金属サイディング→合板→柱・DLTの順で燃焼が進みます。合板表面に着火した時間は加熱開始約5分後位であることから、使用した金属サイディングで約5分程度の防火性能があると言えます。

2) DLTの炭化速度について

木材内部温度の測定結果より炭化速度を計算しました(表5)。

表5 各試験体の炭化速度
表5 各試験体の炭化速度

3) 45分載荷加熱時の柱断面の検討

載荷加熱試験では、柱に長期許容応力度が生じるよう荷重を載荷します。載荷加熱前の断面積に対し、加熱による断面減少の抑制と柱の座屈拘束について比較検討しました(表6)。

表6 柱の燃焼抑制と座屈拘束に対する比較
表6 柱の燃焼抑制と座屈拘束に対する比較

載荷加熱試験の試験体の柱の断面を105×105とし、柱表面の木被覆(t15mm)で柱の燃焼の抑制を図ると共に、柱側面に座屈拘束DLTを配置するⅣ案を採用することとしました。