令和2年度 木材製品の消費拡大対策のうち
CLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材 技術開発・普及事業

DLT加熱試験 結果概要

事業名:木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動
事業期間:令和3年5月9⽇〜令和4年2月19⽇

今後のDLT活用について

  • スギ38×140DLT スパン3.9mは、60分準耐火構造 床と同等の性能を有することが確認できました。

  • スギ30×105DLT スパン3.9mの試験体は、試験の経過状況より30分準耐火構造 屋根と同等の性能を満たすことが確認できました。

  • 本事業の結果を踏まえるとDLTの準耐火構造の大臣認定取得は可能といえます。大臣認定を取得することで、図16で示すような木造準耐火建築物でのDLT現しの床構造や屋根構造での活用が期待できます。

  • DLTは木ダボだけで接合し積層するため、強度特性は構成するラミナの木材強度に由来します。ラミナの節やねじれ、反り、曲がりは燃焼性に影響することから、DLTを構造用途で使用する場合では、素材の品質が明確な JAS 材の利用が条件となります。

  • 製造に大規模な製造設備が不要なDLTは中小木材事業者による生産に適しています。DLTに防火性能の付与によりる付加価値が拡大による地域分散型の生産が期待できます。

  • DLT床構造や屋根構造として使用する場合では、内装制限が課せられる室内の天井では現わしで使用することができないので注意が必要です。
    (なお、延べ面積100m2以内に防火区画とした場合、防火区画による制限緩和を受けた場合、難燃処理、準不燃処理を施したひき板を積層する場合、スプリンクラーと排煙設備が設けられている場合などは、限りではありません。)

図16 DLTの活用例
図16 DLTの活用例

DLT利用拡大に向けて

本事業の実施試験の結果を踏まえ、今後、公共建築物や都市部における木造建築物等でDLTの利用拡大を図る上で、解決が必要な課題を挙げます。

1) DLT 防火性能の拡充

試験体は図1で示すDLT床としました。DLTパネルの組立精度、経年変化によるラミナ間の隙間拡大を想定し、試験体には予め3mm、5mmの隙間を設けました。試験体は表2の4体としました。

  • 本事業ではDLT「床」での防火性能を検証しましたが、DLTは現わしの壁としても使用できることから、DLT壁構造で45分準耐火構造や、60分準耐火構造の検証ができれば、より利用拡大が図れると考えられます。

  • 原木伐採長さは4mまでが主流であることから、本事業では床の最大スパンを3.9mとしました。製材は長さ6mまでは一般的に可能なので、大径木を活用し、材せいを大きくし6mなどのロングスパンDLTの検討・検証があると、DLTの利用拡大が図れると考えられます。

  • 本事業で明らかになっていない45分準耐火構造床の性能を満たすラミナの断面せいを検証できれば、より利用し易くなると考えられます。

2) DLT -コンクリート複合床版の性能把握

  • DLTとコンクリートの複合梁の曲げ試験で、曲げ剛性の向上が図れることが確認されました。本事業の加熱試験では床下面側からの加熱を受けるものと限定していますが、DLTとコンクリートの複合化をすれば、曲げ性能の向上のほか、床版上面側からの加熱にも対応が可能となり、かつ遮音性能の向上にも期待が見込めます。

  • DLTとコンクリートの複合化(DLT-CC;DLT-Concrete Composite)が実現できれば、木造だけでなくS造やRC造の床においてDLTの利用拡大が見込まれます。DLT-CCの性能把握はDLTの利用拡大に資するものと考えられます。

謝辞

本事業は令和2年度 木材製品の消費拡大対策のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業の採択を受けて実施いたしました。本事業の推進にご協力頂きました関係者の方々に、心より感謝いたします。

また、本事業で防火性能検証の実施にあたり、多く方々よりのご協力、ご指導をいただきました。関係者の方々に改めて感謝いたします。

参考資料

  • 株式会社⻑⾕萬:林野庁 令和元年度木材産業・木造建築活性化対策事業 (横架材・2×4部材等の製品・技術開発事業)「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2020年3月)

  • 株式会社⻑⾕萬:木構造振興株式会社 令和2年度 木材製品の消費拡大対策事業のうちCLT建築実証支援事業のうちCLT等木質建築部材技術開発・普及事業 「木ダボ積層材(DLT)の普及に向けた性能評価と普及活動」報告書(2021年2月)

  • 一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会:平成30年度 林野庁委託 CLT等新たな木質建築部材利用促進・定着委託事業(大径材原木等を活かす高機能建築材料の研究開発)「大径材を活用したNLT実用化のための研究・開発」報告書(2019年3月)

  • 一般財団法人 ベターリビング:防耐火性能試験・評価業務方法書

  • 一般財団法人 建材試験センター:防耐火性能試験・評価業務方法書

  • 木構造振興(株):木造建築の防火設計

  • 一般社団法人木を活かす建築推進協議会:ここまでできる木造建築のすすめ(令和2年度版)

  • 公益財団法人 日本住宅・木材技術センター:図解 木造住宅・建築物の防耐火設計の手引き

  • 財団法人 日本建築センター 木造建築物の防・耐火設計マニュアル(第1版)

  • 財団法人 日本建築センター 建築火災のメカニズムと火災安全設計

  • 財団法人 日本建築センター 準耐火建築物の防火設計指針

  • 日本集成材工業協同組合:中大規模木造建築の担い手講習テキスト