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試験目的
杉のDLT梁の曲げ試験(平使いの梁の曲げ試験)を行い、木ダボ接合による効果を確認しました。
曲げ試験では荷重位置を横方向に移動し、荷重位置によるたわみ量の相違を確認しました。 -
試験内容
105mm×450mm、L4.0m DLT梁の曲げ試験
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試験場所
群馬県林業試験場
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試験実施日
2019年7月11日、12日、16日
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試験体仕様
図-1
試験体A1 105×450×4,000 木ダボ@600mm 姿図
図-2
試験体A2 105×450×4,000 木ダボ@900mm 姿図
表-1
試験体仕様の一覧表
DLT構成材:群馬県産スギ 乾燥材(KD材)含水率20.0%以下 30mm×105mm 長さ4.0m
予めグレーディングされたスギKD材 E70以上木ダボ:欧州ブナ 直径20mm たて溝つき 比重0.65以上 含水率13%以下
対照材:スギ集成材 E65F255同一等級構成材 3体
試験
試験1 DLTのたわみ量の測定
曲げたわみ試験状況
曲げたわみ試験状況 拡大
- DLTに部分的に荷重をかけられるよう、荷重を伝える載荷板の下に90mm×90mm、高さ90mm程度の硬木を置きDLTを構成する厚さ30mmの部材の3枚分に伝わるよう荷重をかけました。
- 予備試験として試験体の1体を曲げ試験により破壊して最大荷重を把握し、本試験では初期破壊が生じないよう最大荷重の40%程度をかけて、繰り返し曲げ試験を行いました。
図-3
試験1 集中荷重の載荷位置
- 荷重をかける位置は材端部から材中央部へ移動させ、荷重位置のたわみ量を測定し、木ダボによる連結効果を確認しました。(ケース1)
- 床に使用する場合を想定し、梁上面に合板t24mmを載せて同様の試験を行いました。(ケース2)
- 4KN荷重時変位量:中央集中荷重 支点間3,636mm、載荷速度1KN/min
荷重載荷位置と曲げたわみを計測する変位計の位置は下図の通りです。
試験2 DLTの曲げ強度試験
曲げ試験状況
曲げ試験 破壊状況
- 材を長さ方向にほぼ3等分する位置で下図のように、上側から加力して最大荷重を測定しました。
- 3等分点4点式曲げ:支点間3,636mm、荷重点間1,212mm、載荷速度 20mm/min
図-5
試験2 曲げ破壊試験 荷重位置
試験結果
試験結果数値(速報)
表-1
試験体仕様の一覧表
試験結果のまとめ
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試験1の結果より、DLT試験体では端部①で3枚のラミナだけに荷重載荷した場合であっても中間部②、梁中央③の変位計でも変位を計測しており、木ダボによる荷重分散の効果が確認されました。合板を敷いた上から荷重載荷したケース2で、合板を敷くことで若干変位量が少なくなりましたが同じような傾向で変位が計測されています。
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接着・積層して一体化しているスギ集成材は、荷重の位置に関係なく各変位計が同じような値を示しています。
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変位量の平均値を比べると、DLT試験体の変位量の平均値は、E65F255 同一等級構成のスギ集成材の平使いの梁の平均値と比べ変位量が小さいという結果となりました。
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試験1の集中載荷時の変位量、および試験2の破壊試験の結果から、木ダボ間隔@600mmのDLT試験体(A1)、木ダボ間隔@900mmのDLT試験体(A2)それぞれの変位量と最大荷重を比較すると、木ダボ間隔@900mmのDLT試験体(A2)は変位量が小さく、かつ破壊試験での最大荷重が大きいという結果が得られ、DLTの木ダボ間隔は@900mmで問題がないことが確認されました。
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試験2破壊試験の結果より、DLT試験体木ダボ間隔@900mm(A2)と同一等級構成のスギ集成材の破壊荷重に大きな差はありませんでした。このことから、同程度のラミナ性能による木ダボ間隔@900mmのDLTは同断面のスギ集成材の平使いの代わりとして使用可能と言えます。
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試験2破壊試験では、DLT試験体にて弱いラミナ(引っ張り側に節があるものなど)から曲げ破壊が生じ、破壊したラミナが一定以上になると荷重をささえきれずに変形が大きくなる破壊状況が確認されました。
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変形が大きくなったところで荷重載荷を停止して試験終了としましたが、荷重載荷を取り除くと梁が元に戻るという現象が確認されました。一方で同一等級構成のスギ集成材では梁が一気に破壊して折れ、除力しても梁は折れたままでした。この曲げ破壊の状態からDLTの梁は部分的に破壊しても全体が壊れないので粘り強く安全といえます。